三重県桑名市多度町で、毎年5月4日~5日にかけて行われる多度祭。
南北朝時代から続く、命がけの神事(上げ馬神事) という。
町内6地区からそれぞれ選出された騎手(乗り子)1名が馬と一体となって、約2メートルの崖越えに挑むのだから危険が伴う。しかも3回ずつ行われるのだ。
本作品は、迫力に満ち溢れた多度祭の様子が描かれているドキュメンタリー映画である。
認知度が高くない祭りゆえ、あらゆる場面が目新しく興味深い。
荒々しい馬、興奮する観客、騎手と馬を必死にサポートする青年会の若者たち。
多度祭の活気は想像以上だった。
都会では目に触れる機会がない、野性味が感じられる馬。猛スピードで、崖を駆け上がろうとする力強さに圧倒された。
違う文脈で心を揺さぶられたのは、青年会の若者たちだ。
上げ馬神事という伝統行事に参加したところで、一銭の得にならない。
馬に乗るリスクを考慮したら、関わらない方が無難と考えるのが一般的。
実際、練習中に馬に振り落とされる場面も見られた。
若者たちの多くは髪を金や赤に染めている。一見、ヤンキー風だが、上げ馬神事に取り組む姿勢は真剣そのもの。最初は頼りなく映っていた若者たちだが、本番では誰もが男だった。
成功して嬉し泣き、失敗しては悔し泣き。
良質な青春ドラマにも似た感動が待っていたなんて。
文・シン上田
『おれらの多度祭』
2020 / ドキュメンタリー映画 / カラー / 60分
監督・撮影・構成・編集・語り 伊藤有紀
配給宣伝 オフィスアリガト / 上映統括 多度ふるさと塾
後援 三重県
https://www.orerano-tadomatsuri.com/
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