11月30日、映画『漫画誕生』の公開初日舞台挨拶が、東京・渋谷のユーロスペースで行われた。
主役のイッセー尾形、篠原ともえ、稲荷卓央、モロ師岡、大木萌監督ら17人が登壇。
『漫画誕生』は、日本人で初めて漫画家として成功を収め、現在の漫画業界の礎を築いた北沢楽天(1876-1955)という漫画家の物語。
「僕は今67(歳)なんだけど、この作品は70(歳)のときに撮った作品でして」
楽天を演じたイッセーは開口一番大ボケ。
「僕が知っているこの映画は、ともえさんとのシーンと、検閲官役の稲荷さんとの陰険なやりとりだけなんですね」と続けて爆笑を誘った。
楽天の妻役の篠原は「イッセーさんのお話を聞いていたら、『ああ、現場こんな感じだったなぁ』って、2年ぶりに思い出して幸せな気持ちになっています。現場でイッセーさんはひょうひょうとしているんですけど、どこかとってもアーティスティックでした。アーティストに寄り添って生きる妻、普遍の愛みたいなものを演じる貴重な嬉しい時間でした」と振り返る。
モロの役は福沢諭吉。
「私が福沢諭吉なんてできるのかと不安でしたが、わりかし俗物な人かなと。今でいうとスマホに向かって『おいしい餃子の店を教えてください』なんて言ってる人なのでは。そう思うと、私でもできそうだ、私でも福沢諭吉になれるんじゃないかと思ってやりました」と独自の感性で福沢諭吉を分析。
「この映画は楽天だけの話ではなく、戦争の時代を背景にした、ある種の反戦映画にもなっていたり、ラブストーリーもあって泣けたりする。最後のところでは、涙が止まらなかった」とも語った。
「本当ですか?」
篠原がモロの顔を覗き込むと、「本当にちょっと泣いている!!」と驚きの表情を浮かべた。
「人生は長い、長いですね。自由に生まれて、自由に育って、自由に死んでいけば一番いいんですけど、どうもそうはならない見本のような映画でございます」(イッセー尾形)
「北沢蘭典を知ることで、日本の漫画とか、仕事に対して真摯に向き合うことなどを考えるきっかけになればいいかなと思って作りました。何回も見ると味がある映画かなと思っています」(大木萌監督)
11月30日(土)よりロードショー。
『漫画誕生』
https://www.mangatanjo.com/
撮影・文 シン上田